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2012年1月14日 (土)

『破獄』

広島刑務所で発生した逃走事故のニュースを視たとき、ほぼ反射的に思い出したのが、吉村昭の『破獄』でした。

中身は、昭和の脱獄王と呼ばれた「佐久間清太郎」(仮名)が、脱獄を繰り返し、老い、更生し、そして死んでゆくプロセスを、戦前-戦中-戦後-高度成長期の世相と対比させつつ、吉村さんならではの筆致で描いたものです。私にとって、吉村さんの著作は全てオススメですが、この作品は特にオススメです。

広島刑務所の事件を承けて、某新聞のコラムに実名が登場したり、顔写真まで晒したwebサイトもありますが、素材の性質上多くの登場人物を仮名にせざるを得なかった、という著者の意図に賛同し、ここでは「佐久間」で通します。

この本、私が高校生だった頃に発刊されて、どこかの出版社のプライズを得たものだと記憶しています。確か『スコラ』か何かで紹介されているのを見て(今思うと意外です)、私の関心を惹いたのですが、発刊当時のこと故、ハードカヴァー本しかなく、小遣いもごく少ない身でしたので、文庫化されて買い求めたのは後年のことでした。

圧巻はやはり、難攻不落の網走刑務所からの逃走ですね。周到で粘り強い準備、看守たちに仕掛ける心理戦…言葉は適当ではないかも知れませんが、見事なものです。

脱獄したからといって、真に自由な生活など送れる筈もないのですが、佐久間にとっては、ある種の自己表現手段、人間としての全精力の蕩尽だったのでしょう。安直な言い方ですけど…老いるにつれて、脱獄する気力が萎えていく部分を読むと、そんな風に思うのです。

広島刑務所から逃走した男にとっては、脱獄とは何だったのか、とても興味深いものがあります。

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