海を感じるピアノ
今日、いやもう昨日ですか、「海の日」だったんですね。海とピアノというと、クラシックファンの方はドビュッシーを想起されるでしょうか。
ジャズの世界で「海」と云えば、やっぱりこれハービー=ハンコックの『処女航海』'Maiden Voyage'ですね。個々の曲の出来が素晴らしいので、あまり語られないように思いますが、トータルコンセプチュアルアルバムとしても素晴らしいものがあります。高度な技が駆使されているにもかかわらず、とても聴き易いので、ジャズを初めて聴く方にもオススメです。
ただ、ピアノ単体で海を感じさせるかというと、ちょい疑問ですね。そこは、ピアニストというよりトータルサウンドクリエイターとしてのハービー=ハンコックの資質なのでしょう。
いつだったか、行き着けの店へ入ったら、すごーくスローテンポの"Summertime"がソロピアノで流れていました。どちらかというと、暗い海を連想させる、日本海の荒波のような弾き方で、とても前衛的に聴こえたものですから、「これ、セシル=テイラー?」と訊いたら、「ばかいえ。エリントンだ」と"親父さん"に叱られてしまいました。もう一度聴きたいのですが、エリントンのどのアルバムに収録されているかを確認しなかったのは失敗でした。
"Summertime"は数多のジャズメンが演奏しているので、これがベストプレイ!と特定するのはなかなか難しいのですが、同じく「海」を感じさせるというところで、ジョン=コルトレーンの『マイ・フェイバリット・シングス』'My Favorite Things'の3トラック目の"Summertime"におけるマッコイ=タイナーのピアノが好きです。彼の強力な左手はまるで、岩場に砕け散る波のようで、繊細な右手は水平線の向こうまで連れて行ってくれそうです。
エリントンのピアノが前衛的に聴こえたと書きましたが、私の知るジャズピアニストの中で最も海のイメージに近いのは、前衛ピアノの巨匠である(山下洋輔の師匠みたいな存在である)セシル=テイラーです。比較的初期の『ザ ワールド オブ セシル・テイラー』'The World of Cecil Taylor'なら多少抵抗は少ないでしょうか。
エリントン以下3名のピアノに共通しているのは、弾き方がパーカッシヴ打楽器的という点ですね。偶然ではないと思います。ピアノを前にしたアフロ=アメリカンが、その原点に回帰すべく、敢えて打楽器的な奏法を前面に出した…その結果が、海を感じるピアノなのだと思います。
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コメント
狂四郎さん、こんばんは。
『海を感じるピアノ』について、ものすごく理論的に書かれておりますね。ジャズについて全く知識のない港湾人も、頷きながら楽しんで読ませていただきました。打楽器的奏法が海を感じさせる、なるほど分かる気がします。明日から仕事で海を見ていると、ピアノの音が聴こえてきそうです。
投稿: 港湾人 | 2009年7月21日 (火) 23:57
港湾人さん、お立ち寄りいただきありがとうございます。
ちょっとした思い付きが一文を成してしまった観があり、面映いのですが、オバマ大統領が誕生した今こそ、アフロ=アメリカンのルーツを探しに行こうという大それた野望も少しだけ持っております。
投稿: 狂四郎 | 2009年7月22日 (水) 01:48