富山県を流れる黒部川は、春になると鉄砲水が頻発するそうです。急峻なことで名高い黒部渓谷ですから、雪解け水が流れ始めても、あちこち雪崩で堰き止められます。しかし、当然のことながら、溜まった水が一定以上になれば、雪崩ダムも決壊して鉄砲水になるというわけ。(吉村昭『高熱隧道』)
狂四郎の夏も、鉄砲水で始まりました。親会社の紛議が収束すると同時に、今まで活動が停滞していた営業1・2課から、一気に仕事が流れ込んできました。
水曜日の夕方、営業2課長が来て、プレゼン資料その他一式を2セット置いていってくれました。2課が急いでいることは当然承知していたので、ついついエエ格好しいで「明日までに目を通しておきます」と宣言してしまいました。
水曜日は残業禁止日だということを忘れていました。仕方がない、家で始末しよう。
こんなときは、タバコを3箱くらい買って帰り、帰宅したらすぐにアイスコーヒーをたっぷりつくります。
タバコ吸い放題、コーヒー飲み放題、音楽(ていうか岩崎宏美の歌^^;)聴き放題で、資料に目を通します。プレゼン資料は良いとして、付いていた重要事項説明書を読んで愕然。誤記誤字はさすがにほぼ皆無ですが、主語が存在しなかったり、用語の定義が明記されていなかったりで、そもそも文章になっていません。これでは、アクシデントが発生して裁判でも起された日には、敗訴必至です。
重要事項説明書の雛形は本社で示している筈ですが、昨年あたりから営業支援グループが、この手の仕事を放擲して、開発センターに丸投げしているという噂はありました。開発センターの連中、アイディアは出ますが、こういう地道な仕事は苦手なようです。
とはいえ、開発センターが全て悪いという訳でもありません。現在使われている雛形は、元々営業支援Gが数年前に作成したもので、同業某社のアイディアを盗んだという話を聞いています。新商品開発にすぐ対応できるようにと、なりふり構わず他社のアイディアを盗んでまで改定したにもかかわらず、新商品開発に付随する仕事だからと、営業支援Gの馬鹿どもが、開発センターに押し付けた…というのが事実らしい。
昔なら、本社法務部を通さなければならなかったのですが、法務部もリストラの憂き目に遭って機能低下、まともでない文書が出回り始めて早10年くらいになりますか。
こんなことなら、Wordのファイルを2課長から貰っておくべきだった!と後悔しましたが、明日までに見ると約束した以上、最低限の修正はしなければなりません。赤ペンで加除訂正をしていくのですが、各頁、文字どおり真っ赤になってしまいました。20世紀には、消せる赤ペンがあったらなーと想像したものですが、21世紀になって実現するなんて。素敵!

あっという間に東の空が白んできて、すぐに2課長からWordのファイルを借りようと、早目に出勤したら、2課長も早起きしたらしく、「見てくれた?」。
「すっ、すんません…私が直します。Wordのファイル貸してください」と、真っ赤になった重要事項説明書を差し出すと、「あっ、いいですよ。私の方で直すから」と言ってくれた営業2課長。有難いやら勿体ないやら申し訳ないやら。
後でサブリーダーに報告したら、「いやー、この辺、俺も全然気にしてなかったなー」。もう少し注意深ければ、この人、とっくにリーダーに昇任しているんだけど…